山幸彦の自伝 3
「兄上・・・明日、わたしと道具を取り換えてみませんか」
「え・・・どういうことだ?」
「明日一日、兄上とわたしの道具を交換してみるんです」
「なに・・・?」
「わたし、兄上の道具を持って、海で釣りをしてみたいんです。代わりに兄上、わたしの道具をもって、山に行って狩りをしてみませんか?」
わたしは兄ホデリにこう提案してみた。しかしホデリはなかなか首をたてには降らなかった。
「断る。わたしは海で釣りをするのが好きなんだ。山での狩りなどには興味ない」
「そんなこと言わずに、いつもと違うことをやってみるのも面白いかもしれませんよ」
「やめておけ。なれないことをしたってうまくいくもんじゃない」
拒絶するホデリに、わたしは何度も頼み込んだ。そしてその末に、ホデリは
「そこまで言うのなら、ひとつやってみるか・・・」
と、渋々ながら、承諾したのだった。
わたしは有頂天になってしまった。明日が楽しみだ!よーし、海の魚を山のように持ち帰って、ホデリを驚かせてやろう・・・
「この針は大事な針だからな、くれぐれも無くさないでくれよ」
そんなホデリの言葉も、ほとんど耳に入らなかった。
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