オモイカネの自伝 34
コノハナサクヤヒメさまは仮宮の外に飛び出したかと思うと、そこにあった小屋に閉じこもってしまいました。
わたくしとニニギさまが急ぎ追いかけていくと、コノハナサクヤヒメさまは小屋の戸を内側から土で塗り固めていました。これでは中に入ることも、外に出ることもできません。
「コノハナサクヤ!わたしがわるかった!出てきてくれ!!」
ニニギさまは小屋の外から呼びかけますが、返答はありません。そのうち・・・
パチパチパチ・・・
異様な音が聞こえてきました・・・小屋が燃えています!
コノハナサクヤヒメさまが内側から火を放ったのです!!
「火を消すんだ!早く!!」
わたくしは配下の神に命じました。しかし、薄い板と草でできた小屋に火の回りは早く、あっという間に小屋全体が猛火に包まれました。
「コノハナサクヤーー!!」
ニニギさまは今にも火の中に飛び込んでコノハナサクヤヒメさまを助けようとされていました。わたくしは必死でニニギさまをお止めいたしました。
「ニニギさま!おやめください!!ニニギさまにまで万一のことがあったら、日本の民はどうなるとお思いですか!!」
その時でした
おぎゃー!おぎゃー!
赤子の泣き声が聞こえます・・・燃え盛る小屋の中から・・・産まれたのでしょうか!?
おぎゃー!おぎゃー!
「コノハナサクヤ・・・」
ニニギさまは呆然とされていました・・・
そうこうしているうちに、小屋は轟音を立てて崩れ落ちました。そして、そのあとに・・・
・・・三人の赤子を抱いた、コノハナサクヤヒメさまが立っていました。
「コノハナサクヤ・・・無事だったか!」
ニニギさまはコノハナサクヤヒメさまのもとに駆け寄ります。
「ニニギさま・・・三つ子が・・・男の子が産まれました。あなたの子、天の御子です」
コノハナサクヤヒメはそっと三人の赤子をニニギさまに差し出しました。
ニニギさまは赤子を受け取りました。
そのお顔、涙でくしゃくしゃになって、感極まって何も言えないご様子でございました・・・
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☆双子池遺跡
この時コノハナサクヤヒメが火を放った小屋、出入り口を土で塗り固めてしまったので「無戸室」(うつむろ)と呼ばれます。宮崎市の木花神社や西都市の都万神社に無戸室の跡と伝わる地がありますが、日本書紀においてニニギが宮を置いたという鹿児島県南さつま市の笠沙宮跡の近くの双子池遺跡にも伝承が伝わっています。
☆竹屋神社
ここも日本書紀において二ニギが宮を置いたという笠沙宮跡と伝わります。
へその緒を切った竹刀が根付いて育ったという「へら岳山」が山麓にあり、そこから株分けした竹が神社の境内にもあるそうです。
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