古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

サルタビコ

 オモイカネの自伝 27

 

f:id:karibatakurou:20210519101110j:plain

 

地上から昇って来た神に、ウズメは大笑いしながら向き合います。地上から昇ってきたその神は、ウズメの裸の姿、大笑いに圧倒されています。

 

その神が、おずおずと口を開きました。

「・・・そなた・・・一体、どうしたのだ・・・」

 

ウズメがその神に向かって放ちます。

「アマテラス大御神の御子が今から向かう道に立ちふさがっている、お前は誰だ!!」

さすが男勝りのウズメ、その神の異様な姿を目の前にしても、まったく物怖じしません。

 

その神が答えました

「わたしの名はサルタビコ。アマテラス大御神の御子が今、降臨されると聞いて、道案内のために昇ってきたのだ」

 

その短い会話から、ウズメはサルタビコと名乗るその神に、邪心がないことを見抜いていました。

わたしのほうを振りき、言った。

「オモイカネさま、この神は悪い神ではございません」

 

「そうか、ニニギさまの道案内のために昇ってきたのだな。では早速、ニニギさまにお目通りしてもらおう・・・あれ?ニニギさま?・・・」

 

サルタビコの恐ろしい姿におそれをなしたニニギさまは、神々の後ろでしゃがんで震えていたのです。

わたしはニニギさまに向かって強い口調で申し上げました。

「ニニギさま!しっかりなさいませ!

昇って来た神はサルタビコという名で、ニニギさま道案内をするために昇ってきたそうです。悪い神ではございません。

さあ、サルタビコにお目通りを!!日本の統治者らしい威厳をお持ちくださいませ!」

 

そういわれたニニギさまは、まだ震えながらも、勇気を振り絞ったようです。立ち上がって前に出て、ひざまずいているサルタビコの前に進み出ました。

「そなたがサルタビコか。ご苦労であるな!」

 

サルタビコは

「恐れ入ります。天の御子の道案内のために、日本から昇ってまいりました」

と答えます。

 

「そうか、わたしは日本の、どこに向かえばよいのだ?」

「はい、筑紫の日向の高千穂のくしふる嶽に向かうのがよろしいかと思われます」

 

さっきまで震えておられたニニギさまは、堂々とサルタビコと話しておられました。ニニギさまは多少ながらも統治者としての威厳が出てきたご様子です。

 

こうして天孫ニニギさまは、くしふる嶽めざして出発することになったのでございます。

 

前<<<  ウズメが出てくる - 古事記の話

次>>>  宮を造営する - 古事記の話 (hatenablog.com)

 

オモイカネの自伝 目次

 

 

☆サルタビコ

 

サルタビコはその容貌から天狗と同一視されることがあります。

 

また、ニニギを道案内したという事績から、道路の分かれ道や村の境界などに祀られている道祖神と同一視されることもあります。

一方、「サルタビコ」という名前から中世以降、庚申(かのえさる)の日を特別視する庚申信仰(こうしんしんこう)と結びつきました。

 

≪リンク≫
 
小説古事記

古事記ゆかりの地を訪ねて
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
鉄道唱歌の話