野原を焼き尽くした火は、翌朝になってやっと鎮火した
わたしは穴をはい出て、スサノオさまの宮殿のほうへ向かって歩く。まだ野のあちこちでは、残り火がくすぶっていた。
ゆっくり歩いていくと・・・残り火くすぶる野からたちあがる煙の向こうに、ふたつの人影が見えた・・・
スセリヒメ!
それと、スサノオさまだ!
わたしはゆっくり歩いていった。
だんだんふたりの姿がはっきりしてくる。
スセリヒメは喜びにあふれ、感極まって涙を流していた・・・
後から聞いたところでは、わたしは死んだものとすっかり思い込んでいたらしい・・
そしてスセリヒメの横に立つスサノオさま・・・これはいつもと変わらなかった。相変わらずいかつい顔のまま、わたしをみても眉ひとつ動かさなかった。
「オオナムヂさま・・・」
うれしそうにつぶやくスセリヒメに目で答えて、スサノオさまの前に進み出る。
「スサノオさま、鳴鏑の矢は持ってまいりました。矢羽はネズミの子がかじってしまったのですが・・」
そういっても、スサノオさまは表情変えなかった。ただ一言「ご苦労」といっただけだった。
スサノオさまとスセリヒメと、三人連れ立ってスサノオさまの宮殿に帰っていった。
スサノオさまの宮殿に入り、大広間に入っていった。
すると、そこにスサノオさまはごろんと横になった。そして
「ああ、頭がかゆい!かゆくてたまらん!オオナムジ、頭のシラミを取ってくれ!」
そういわれてわたしは素直にスサノオさまの頭の後ろにしゃがみ込んだ。そしてスサノオさまの長い髪の毛をかき分けた。
すると・・・
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☆シラミ
(画像はいらすとやより)
古事記にもシラミ取りの話が出てくるぐらい、シラミは昔から身近で悩まされ続けてきた害虫だったんですね。「しらみつぶし」という言葉もあるくらいですから。
シラミ(虱)は体毛や衣服に張り付いて吸血する昆虫で、はげしいかゆみや湿疹をおこします。
日本では昭和20年代の戦後混乱期、劣悪な衛生環境や、海外から引き揚げ者・復員兵が大量に持ち込んだことにより国中に大流行しました。
進駐軍がDDT(有機塩素系殺虫剤)を大量に散布し、その後は衛生環境も改善され、ほぼ絶滅されました。時にアタマジラミが小規模な流行をみることはありますが、現代の日本人にとってはほとんど無縁なものとなっています。
さて、スサノオの頭にいたシラミというのは・・・
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