一刻後
わたしとイザナミは、天の浮橋に立っていた。ここからなら、下界の様子がよく見える。
そこには海も陸もなかった。ただ一面、茶色のどろどろしたものが広がっているだけだった。
わたしは不安になってきた。
「こんな、何もないところに国を作ろうと言っても・・・何から始めればいいんだろう・・」
しかし、イザナミは無邪気に言う
「イザナギ!しっかりしなさいよ!ほら!」
確かにこれは神の力が詰まった矛だ。これに触れると体中に力がみなぎってくるのがよくわかる。
「よし、やろう!イザナミ、まずこのどろどろした地上をかためて、僕らの足場を作ることが必要だよ」
「イザナギ!そう来なくっちゃ!・・・で、どうするの?」
「島を作る!この矛を突き刺して、持ち上げてみよう!矛から落ちる雫が固まって島になるはずだよ」
「わかったわ!」
わたしはそうなるという確信があったわけではない。ただ何となくこの沼矛でかき回して雫をたらすと島ができそうだな・・そんな気がしただけである。
後から考えると、それも沼矛がそうしろと教えてくれたのかもしれない。
わたしとイザナミは一緒に矛を持つと、海に突き刺す。ふたりでこおろこおろと海をかき回す。
そして持ち上げた。
果たして、矛の先からはしずくが垂れていた。
・・・そのしずくは固まり、だんだん大きくなっていった。
ついに島ができた。わたしたちはこれを、自ずから凝り固まった島なので、オノゴロ島(自凝島)と名付けた。
≪オノゴロ島(自凝島)との伝承が残るおのころ島神社。今は平原の中の丘陵だが、昔は海に浮かぶ島だった。≫
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☆オノゴロ島
日本の始まりとなるオノゴロ島。
淡路島を中心に各地に伝承地が伝わっています。
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