その日、わたしはイザナミと一緒に造化三神の前に進み出た。祭壇の中央にアメノミナカヌシ様、左右にタカミムスビさまとカミムスビ様が鎮座されている。この三柱が造化三神と言われる、世の中で一番最初に生まれてきた神だ。
張り詰めた空気が流れている。わたしは緊張していた。イザナミも同じだったろう。
祭壇の前に進み出ると、身動き一つできなかった。
中央のアメノミナカヌシ様が、おもむろに言われた。
「今日、お前たちを呼び出したのは、地上に国を作りたいと思ったからだ。天はこうして高天原ができ神生まれてきたが、地上はというと、どろどろしたものが広がっているだけだ。そこでお前たち、地上に降りて国をかためて造りなさい」
わたしは戸惑った。もちろんイザナミも同じだろう。私もイザナミも、どうすればいいかわからなかった。
「国を作れ・・って、どうすればいいのでしょうか」
わたしはおずおずと尋ねてみた。
するとアメノミナカヌシ様は、一本の矛を取り出された。勾玉で飾られて不思議な光を放っていた。
「ここに天沼矛(あめのぬぼこ)がある。これを持っていきなさい」
と言われる。
「え・・でも・・」
わたしとイザナミが戸惑っていると、
「まあ、とにかくふたりで手を伸ばして、受け取ってみなさい」
さっきまでの威厳ある声と違って、とてもやさしい声で言われた。
そこでわたしとイザナミは、ふたりで手を伸ばしてその矛を受け取った。
するとどうだろう、神々の力が込められているその矛を受け取っ瞬間、わたしたちは全身になんともいえぬエネルギーが満たされていくのを感じたのだった。
わたしたちは造化三神に一礼して退出した。
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