古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

石も逃げた

 

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天皇は酒をとても好んでいた。

何しろ、幼少の折、建内宿祢に連れられた禊の旅から大和に帰還した時、母の神功皇后から神酒の歓迎を受けたのだ。成長してからは、何かにつけて酒を楽しんだ。

 

といっても別に酒癖が悪いわけでもなかった。酔っては明るく歌い、舞を踊って、近習のものを楽しませていた。

 

そんな天皇だから、百済の国から酒造技術者のススコリが来日した時は大喜びだった。ススコリは異国の酒を醸造して天皇に献上した。

天皇は大喜びでその酒を味わい、舞を舞った。

 

天皇はいい気分で、建内宿祢を伴って庭に出た。そこに小石があった。

 

天皇はいたずら半分で、手にしていた杖で小石をつつこうとした。すると・・

 

小石は素早く、そこから逃げ出したのだ!

 

「なんだ、この石、動いて逃げたぞ!」

天皇はあっけにとられていった。

 

建内宿祢は笑って

「ハハハ!陛下、硬い石さえ酔っぱらいは避けていくものでございますよ!お酒はほどほどに!」

「はは、まったくその通りだな・・」

 

二人は顔を見合わせて笑いあっていた。

 

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☆ことわざ

 

古事記には、このことからことわざで「硬い石も酔っぱらいは避ける」というようになった、と記されています。古事記が編纂された西暦600年代末から700年代初頭、こんなことわざがあったのでしょうね。

 

まあ、確かに、酔って絡んでくる奴には近づきたくないよな・・

 

≪リンク≫
 
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