皇后と御子が乗る喪船の奇襲に失敗した、将軍イサヒ率いるオシクマ軍。
将軍タケフルクマ率いる皇軍は、オシクマ軍を河内から山城まで追い詰めていった。ところが山城の国で、急を聞いたオシクマの援軍が駆けつけてきたのだ。
オシクマ軍は勢いを盛り返し、山城の国で両軍は膠着状態に陥った。
その時、オシクマ軍の将軍イサヒのもとに、皇軍からの使者が訪れた。
使者は皇軍の将軍タケフルクマからの伝言を伝える。
「イサヒ様、我が将軍タケフルクマは、貴軍との講和を望んでおられます」
「なに・・講和だと?・・いきなり言われても信用ならんぞ・・」
「いえ、実は昨日、急な病で皇后陛下がお亡くなりになったのです。こうなってはもはや戦っても仕方がないので、講和を望んでおられるのです。
戦う意思がないことを示すため、我が軍の兵士はみな弓の弦を切っております、ご覧くださいませ」
そこでイサヒは陣屋の外に出てみた。するとそこにはタケフルクマを先頭に、弦が切れた弓を置き地面に膝まづいている兵士たちの姿があった。
「うむ、そうか。わかった。タケフルクマ閣下によろしく伝えてくれ」
そういうとイサヒは使者を返し、自軍の兵士に武装解除を命じた。
その時だった
「今だ!やれ!」
膝まづいていたタケフルクマが立ち上がり、兵士に向かって叫ぶ。この声を合図に皇軍の兵士は、髪に隠していた予備の弦を素早く弓に張ると、オシクマ軍に向かって一斉に矢を射放ったのだ。
武装解除していたオシクマ軍は混乱し、再び敗走した。
オシクマ軍は散り散りになり逃げだしたが、琵琶湖まで追い詰められて全滅した。
オシクマとイサヒだけは命からがら小舟を出して琵琶湖に逃れたが、もはや味方は誰もいなかった。
二人はともに小舟から琵琶湖に身を投げて果てたという。
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☆やり方が汚い・・
オシクマもイサヒもさぞ無念だっただろうな・・
しかしヤマトタケルもそうでしたが、古事記には朝廷側のこんなだまし討ちが随所に出てきます。
古事記は朝廷の正当性を伝えるための書物のはずですが、昔の人の倫理観は現代人とは違ったところにあるようです。
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古事記ゆかりの地を訪ねて