甲斐の酒折宮を出立したヤマトタケルは、さらに信濃の国に行き、そこに住んでいた部族を朝廷に従えた。
そして、尾張の国に戻ってきた。
尾張・・・そう、結婚を約束したミヤズヒメがいるところ・・・あれからもう、幾年の月日が過ぎた。
彼女は待っててくれているだろうか・・・それとももう誰かの嫁になったのだろうか・・・
ヤマトタケルはミヤズヒメがいるはずの、尾張の国造の屋敷に急いだ。
果たして、そこにミヤズヒメはまだいた。嫁には行っていなかったのだ。
「ミヤズヒメ・・・待っててくれたのか・・・」
「ヤマトタケル様・・・ミヤズはお帰りをお待ち申し上げておりました・・・」
ミヤズヒメは涙を流して喜び、また尾張の国造もヤマトタケルを歓迎し、その夜はヤマトタケルを囲んでの酒宴が開かれた。
ところが・・・ミヤズヒメの着物の裾には血がついている・・・月経の血だ。
ヤマトタケルはそれを見て言った
「天の香具山を優美に飛びわたる白鳥・・・その白鳥のような白く細い腕を抱いて、ともに寝たい・・だが、その着物に月が出ていたのでは・・・」
ミヤズヒメはすぐに答えて言う
「ああ、日の御子、我が大君よ・・年が過ぎれば月も去っていくものでございます。そしてあなたを待ちきれず、わたしの着物に月が出たのでしょう」
ヤマトタケルはミヤズヒメを抱き寄せ、いつまでも寄り添っていた。
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☆氷上姉子神社
ミヤズヒメが住んでいた屋敷の跡に創建されました。
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