古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

吾妻はや

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ヤマトタケルは東国平定を終え、その帰り道、相模と武蔵の境、足柄峠まで戻ってきていた。

 

足柄峠で小休止し、食事をとっていた。するとそこに一頭の白い鹿が現れた。

 

「む、こいつ・・ただものではないな・・」

ヤマトタケルはその鹿に邪悪な霊気を感じた。そう、この鹿は足柄山の神だった。

 

ヤマトタケルは食べかけの蒜(ヒル)(ニンニクやニラなどの香味野菜のこと)を取ると、鹿に向かって投げつけた。すると鹿の眼に当たり、死んでしまった。

蒜にはその臭気に邪気を払う力があるとされていたのだ。

 

そしてヤマトタケルの心は、また沈んでしまった。

 

こうして自分は幾たびも、荒ぶる神、朝廷に従わない人々を倒してきた。ただただ冷酷な父上の命令のために、自分を慕ってくれた妻のことも顧みずに・・・

 

・・自らの命を賭して海に入り、自分を救ってくれたオトタチバナヒメ・・・

 

そして峠の坂の上で、オトタチバナヒメが入水した東の海を見つつ、三度嘆き悲しんだヤマトタケルの口から出た言葉

「吾妻(あづま)はや・・・」(ああ、我が妻よ・・)

 

そして東国のことを「あずま」というようになったという。

 

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足柄峠

 

古代東海道の交通の要所でした。

なお、日本書紀では「あづまはや」と言ったのは碓氷峠であるとされています。

 

足柄峠 wikipedia
足柄神社 神奈川県神社庁


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