ヤマトタケルは東国平定を終え、その帰り道、相模と武蔵の境、足柄峠まで戻ってきていた。
足柄峠で小休止し、食事をとっていた。するとそこに一頭の白い鹿が現れた。
「む、こいつ・・ただものではないな・・」
ヤマトタケルはその鹿に邪悪な霊気を感じた。そう、この鹿は足柄山の神だった。
ヤマトタケルは食べかけの蒜(ヒル)(ニンニクやニラなどの香味野菜のこと)を取ると、鹿に向かって投げつけた。すると鹿の眼に当たり、死んでしまった。
蒜にはその臭気に邪気を払う力があるとされていたのだ。
そしてヤマトタケルの心は、また沈んでしまった。
こうして自分は幾たびも、荒ぶる神、朝廷に従わない人々を倒してきた。ただただ冷酷な父上の命令のために、自分を慕ってくれた妻のことも顧みずに・・・
・・自らの命を賭して海に入り、自分を救ってくれたオトタチバナヒメ・・・
そして峠の坂の上で、オトタチバナヒメが入水した東の海を見つつ、三度嘆き悲しんだヤマトタケルの口から出た言葉
「吾妻(あづま)はや・・・」(ああ、我が妻よ・・)
そして東国のことを「あずま」というようになったという。
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☆足柄峠
古代東海道の交通の要所でした。
なお、日本書紀では「あづまはや」と言ったのは碓氷峠であるとされています。
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