古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

イズモタケルを討つ

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ヤマトタケルはイズモタケルと偽りの親交を結んだ。

 

二人して連れ立って、斐伊川のほとりを歩いていた時のことだった。

 

「イズモタケルさま、なかなか立派な太刀をお持ちですね」

「おう、これか・・この斐伊川は昔から製鉄が盛んでな・・良質の鋼がとれるんだ。その鋼で作った、岩さえも切れる剣だ。これさえあれば、ヤマトの朝廷なんぞ、恐れることは無いさ!

おい!そういうお前も、なかなか立派な太刀を持っているじゃないか!」

「いえ、こんなの、イズモタケルさまの太刀と比べたら・・・イズモタケルさまの、斐伊川でとれた鋼の太刀、一度でいいからもってみたいなあ・・・イズモタケルさま、ちょっとだけ、太刀を交換していただけませんか」

「おう、いいともさ!」

 

 イズモタケルはすっかりヤマトタケルの、偽りの友情を信じていた。

 それぞれ太刀を交換する。

 

その直後のことだった。

「よし、いくぞ!」

 ヤマトタケルが言ったかと思うと、鞘から太刀を抜いてイズモタケルに突き付けた。

 

「・・・おい、お前・・どうした!」

驚愕したイズモタケルが言う。しかしかまわず、ヤマトタケルはイズモタケルに斬りつけた。イズモタケルのものである、斐伊川で作られた鋼の剛剣で・・

 

イズモタケルは慌てて、剣を抜こうとする。ヤマトタケルの剣を・・・しかし、抜けない!

 

ヤマトタケルはあらかじめ、樫の木で木刀を作って、それを腰に差していたのだ。その木刀を、イズモタケルの鋼の剣と交換したのだった。

 

・・・あっさりとイズモタケルは、ヤマトタケルに斬り殺されてしまった。

 

 ヤマトタケル

「あっはっは!貴様の太刀、立派な飾りのきれいな太刀だが、その中身はなかったな!」

あざけるように笑って言った。

 

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☆いやはや、なんともひどい・・

 

騙し打ちにもほどがある、って言いたくなります。

天皇の権威を高めるためには、反抗する勢力をつぶすのに手段は択ばない。それが正義だったのでしょう、しかしそれにしても・・


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