クマソタケルの屋敷では、新築祝いの宴会がにぎやかに開かれていた。
クマソタケルの兄弟を中心に、親族や配下の者は酒を飲みかわし、上機嫌で歌ったり踊ったりしている。その中を給仕の女官たちは、忙しく男たちの間を行ったり来たりしていた。
クマソタケルの兄弟も上機嫌で酒を飲んでいた。そんななか、女官たちの中に年の頃14~15歳ぐらいの、かわいらしい少女がいるのに気づいた。
・・もちろん、女装したオウスである。
「おい、おまえ、こっちに来い!」
兄弟はオウスを呼び寄せた。
「まあ、ここに座れや」
兄弟の間に少女を座らせる。
「おう、かわいい娘だな!あんまり見ない顔だが、新入りか?」
「はい、昨日から奉公させていただいております」
「そうか、名はなんという?」
「え・・あの・・オウス・・・オウスヒメと申します」
「オウスヒメか、いい名だ!」
兄弟はいい気分でオウスが注いだ酒を飲んでいた。そして・・・
酔いが回った兄弟。その時、兄が、急にオウスの手を引っ張り、自分のもとに寄せると、オウスに抱き着いた。
「わっはっは!オウスヒメ!お前には一生、いい夢を見させてやるぞ!」
兄は暴力的な支配者の本性そのままに、オウスを犯そうとする。
弟も宴会場に居る者も、その様子を大笑いしながら見ていた。
しかし、その時である・・・
兄は抱き着いているオウスの体に違和感を感じた・・・女の体ではない。
「む・・・お前、何者だ!・・・ううっ!」
気づいたときには遅かった。
オウスが隠し持っていた剣は、兄の胸から背まで貫いていたのだった。
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