古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

トヨタマビメ、海に帰る

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そこには赤子を抱いたトヨタマビメが立っていた。

 

「ホオリさま・・・男の子が産まれました。あなたの子、天の御子です」

というと、そっと抱いた赤子をホオリのほうに差し出した。ホオリは赤子を受け取ると、言いようのないうれしさで涙があふれてきた。ああ、わたしの子・・・妻の正体が何だっていいじゃないか・・・大事な妻、大事な子だ・・・

 

しかしトヨタマビメは、ホオリの行動がすべてわかっていた。

 

「ホオリさま・・・私はこれからもずっと海の道を通って、ホオリさまと生まれた子に会いに来たかった・・・でも、それもかなわぬ夢となりました。お別れです」

「なに?おい、お前・・・」

「私はホオリ様がみた通り、ワニなのです。見られたからには、もう陸に上がることはできません・・・ホオリさま、いつまでもお元気で!」

「まて!トヨタマ!行くな!・・・」

 

しかし、既にそこには、トヨタマヒメははいなかった。

 

トヨタマ・・・お前がワニだろうが何だろうが、お前を愛しているんだ・・・」

 

しかし子を抱くホオリの目の前には、ただ広い海原が広がっているだけだった。

 

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古事記の話 目次

 

 

鵜戸神宮

 

この時産まれた子には、ウガヤフキアエズと名付けられました。漢字で書くと「鵜葺草葺不合」、そのまんまのネーミングです。

 

トヨタマビメがウガヤフキアエズを産むために建てられた産屋跡は、今の鵜戸神宮とされています。

 

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