古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

針があった!

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なるほど、天の御子が訳もなしにこんな海の底までくるわけないと思っておりましたが、そういうことでございましたか」

 

そこで海神オオワダツミは、早速海中の魚を呼び集めた。海神の呼びかけに、大小さまざまな数多くの魚が集まってきた。 

海神は魚たちに向かって言う。

 

「いま、天の御子が釣り針を無くされて困っておる。お前らの中でその釣り針がどこにあるか、知っているものはおらぬか」

 

すると、魚が口々に言った。

「ここには赤鯛が来ておりませんが、近頃、喉に骨が刺さって食べることができないと困っております。おそらく、赤鯛の喉に刺さっているのではないでしょうか。」

 

そこで赤鯛を呼び寄せ、喉の奥を調べてみると、果たしてその針が出てきた。

すぐに取り出し、洗い清めてから、海神は針をホデリに差し出した。

 

「ホオリ様がお探しの針、これではありませんか?」

「ああ、これです!ありがとうございます!」

ホオリは喜んで針を受け取ろうとした。

 

「お待ちください」

海神が言った。

 

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