ホオリが海神の宮殿に滞在し、3年の月日が経った。
ホオリはトヨタマビメを嫁にし、何一つ不満はなく、海の宮殿で暮らしていた。
しかしある時、ふっと思い出したことがあった。自分は何のためにここに来たのか・・・なくした兄神の釣り針を探すためではなかったか・・・
そして大きなため息をついた。
トヨタマビメは、愛する夫の変化を見逃すことは無かった。
トヨタマヒメは、心配して父の海神に言った。
「ホオリ様が今朝、大きなため息を漏らしました。ホオリ様はここにきて3年たちますが、日ごろため息など漏らしたことはありませんでした。ホオリ様は、何か心配事でもあるのでしょうか。」
父の海神は娘の話を聞き、考えた。
確かにため息ついたというのも気になるが、そもそもなぜ天の御子がこの海中にある宮殿までやってきたのか・・・
ホオリからはそのような話は一度も聞いたことがなかった。何か、今日のため息と関係あるのではないか・・・
そこで、海神はホオリを呼び出した。娘から聞いた話を伝えて心配していることを話し、
「天の御子ともあろうものが、どのような訳あってこのような海の底までいらしたのですか。
今朝、ホオリ様が大きなため息を漏らしたと、娘のトヨタマが大変心配しております。何か、ここに来られた事情と関係あるのではございませぬか?」
と言った。
そこでホオリは、海神の宮殿に来ることになったいきさつを詳細に述べた。
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☆トヨタマビメ
海神オオワタツミの娘です。浦島太郎に出てくる竜宮城の乙姫様と同一視されることもあります。
ホオリの父ニニギは山の神の娘を嫁にしていますので、この後生まれてくる天皇は海と山の両方のパワーを持った存在となります。