侍女はトヨタマビメのもとに行き、勾玉の付いたままの器を差し出した。
トヨタマビメは侍女に向かって言う
「ご苦労でした・・・あら、何?この勾玉?」
「それが・・・井戸のそばの木に不思議な神様が登っていて、水を下さいというんです。なので器を差し出したら、その神様、水は飲まずに勾玉を口に含んで吐き出して・・・取れないので仕方なく、そのままお持ちしたんです」
「え?どういうことでしょう?」
そこでトヨタマビメは自らその井戸のそばに様子を見に行った。
そして井戸のそばに立っていたホオリと出会った。
ホオリとトヨタマビメの目が合う。トヨタマビメは、その目に気高く高貴なものを感じた。この男はいったい・・・
トヨタマビメは
「しばらくお待ちください」
というと、また宮殿の中に入り、父の海神オオワタツミに
「とても立派な神様がお見えになっています」と報告した。
海神は娘の言葉を聞き、自ら外に出てホオリに会いに行った。
ホオリの姿を見ると
「おお、あなた様は天の御子、ホオリさまでいらっしゃいますね。これは恐れ多いことでございます。よくぞお越しくださいました」
と言って、宮殿の中に招き入れた。
海神は大変喜んでホオリをもてなした。
ホオリはトヨタマビメと結婚し、3年の間、海の国にとどまっていた。
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☆海神オオワタツミ
オオワタツミ(オオワダツミ)はイザナギとイザナミが産んだ神の一人で、海の神です。オオ(大)の接頭語がつくように海の神の総元締めというべき存在です。
これだけな話は簡単なのですが、実はさらにイザナギは黄泉の国から帰ってきたときからの禊で「綿津見三神」と呼ばれる海の神を産んでいるのです。
綿津見三神を祀る志賀海神社は「海神の総本社」とされ、古代日本で勢力をふるった安曇氏の祖も綿津見三神です。こちらのほうがむしろ総元締めと言った感じです。
イザナギ・イザナミの神産みで生まれたオオワタツミと、禊で生まれた綿津見三神の関係、諸説ありますがよく分かりません。