こうして、ニニギを中心とした一行が高天原から下ろうとしていた時だった。
地上の日本から、上は高天原を、下は日本を明るく照らしながら昇ってくる神がいた。
ニニギを中心とする一行は身構えた。
オオクニヌシはコトシロヌシを先頭に日本の神々は天に従うと言ったが、それに納得できない神が反乱を起こし天に攻めてきているのではないか・・・十分あり得ることである。
そこで見送りに出ていたアマテラスとタカミムスビは、一行の中からウズメを呼び出し、言った。
「そなたはとても美しく、華奢な女神ではあるが、その眼光は鋭く手向かうものを恐れさせる力を持っています。なのでそなたが先に行って、なぜあの神が日本から昇ってくるのか、問いただしなさい。」
何といってもウズメは天岩戸からアマテラスを外に導き出した立役者である。女神と言えど何物にも物おじしない胆力を持っていた。
そこで、ウズメは先鋒として先に出ていき、日本から登ってくる神に向かって言った。
「わたしはウズメ、天つ神です。今から天の御子ニニギ様を奉じて日本へ降りるところです。なにゆえ、そなたは私たちの前に光を照らしながら昇ってくるのですか」
その言葉は穏やかで優しかったが、なんともいえぬ威厳にも満ちていた。
地上から昇ってきた神は、かしこまって答えた。
「わたしは国つ神のサルタビコと申します。天の御子が天降されると聞き、道案内のために今、上ってきたところでございます。」
ウズメはその言葉に嘘偽りは感じられなかった。戻って、アマテラスとタカギムスビにサルタビコの言葉をありのまま伝えた。
前<<< 三種の神器を賜る - 古事記の話
次>>> 高千穂に降臨する - 古事記の話
☆ウズメ
サルタビコにその正体を明かすよう迫るウズメ。古事記には詳細な記述はありませんが、日本書紀には
「胸乳をあらわにし、着物の帯をへその下まで垂らして、大笑いしながら向き合った」
と書いてあります。
いきなりトップレスの女神がげらげら笑いながら現れりゃ、そりゃー天狗のサルタビコもびっくりしたでしょうね。
天岩戸の神話からウズメは芸能の神として信仰されています。
また、古事記の語り部として知られる稗田阿礼はウズメの子孫とされています。