オオアナムヂが生き返ったということを聞き、異母兄たちは驚愕した。
「おい、オオアナムヂが生き返ったそうだぞ!」
「なんでも、オオアナムヂの母親が高天原のカミムスビ様に泣きついて生き返らしたそうだ」
「だけど、これはやばいぞ」
「ああ、オオアナムヂは末っ子で普段は俺たちの言いなりになってるとはいえ、臆病者じゃない。あれで肝っ玉のすわったやつだからな」
「俺たちの陰謀で殺されたんだ。この後どんな報復をしてくるかわからないぞ」
「ここは先手を打って、もう一度オオアナムヂを嵌めたほうがいい」
「ああ、それしかないな」
異母兄たちは、またよからぬはかりごとをした。
心根のまっすぐなオオアナムヂは、兄神に報復しようなどとはみじんも考えなかったのだが・・・
再び異母兄たちによって誘い出されたオオアナムヂは、異母兄たちと一緒に倒木のわきに来ていた。倒木はくさびを打ち込まれて、二股に割かれている。
「オオアナムヂ、あの割けた木の間に勾玉を落としたんだ。すまんがちょっと取ってくれんか」
「はい」
オオアナムヂは素直に木の間をのぞいてみたが、何も見えない。
「お兄様、何もありませんよ」
「そんなはずはない、もっとよく見てくれ」
そこでオオアナムヂは、割けた木の間に頭を突っ込んでのぞき込んだ。
その時だった。
「オオアナムヂ!危ない!!」
甲高い声が響いた。オオアナムヂははっとして顔を上げた。
次の瞬間、いやほとんど同時だった。
バチーン!!!
大音響が響いた。
異母兄たちがくさびを引き抜き、割けた木がもとに戻ったのだ。
・・・
もし、危険を知らせる声にオオアナムヂが顔を上げなかったら、オオアナムヂは頭をつぶされて、即死していただろう。
「オオアナムヂ!無事なのね!よかった!」
駆け付けたのは母神サシクニワカヒメだった。また異母兄たちがよからぬはかりごとをしてオオアナムヂを殺そうとしているのではないかと、探していたのである。まさに母の勘とでもいうべきものだった。
異母兄たちはまた失敗したと見るや、我先に逃げて行ってしまった。
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☆オオアナムヂは二度死ぬ
拙ブログでは母神の機転で危機一髪助かったことにしていますが、古事記においては本当に体をつぶされ死んでしまい、それを母神サシクニワカヒメが生き返らせたことになっています。
・・・母神だけで生き返るのであれば、なんで前回カミムスビに頼んでキサガイヒメやウムギヒメに助けてもらったんだろう・・・