古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

オオアナムヂ、生き返る

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オオナムチの母・サシクニワカヒメは、出雲の国でオオアナムヂが死んだという悲報を聞いた。母神は居ても立ってもいられず、いそいでオオアナムヂを探しに出かけた。そして、伯耆の国で全身に熱傷を負い、大岩に潰されて無残に殺されたオオアナムヂを見つけた。

 

「ああ、オオアナムヂ!どうして、こんな!」

 

母神は泣き悲しんだ。どのくらい泣いただろうか・・・

 

母神は意を決して、高天原に昇って行った。

 

高天原造化三神の一人・カミムスビの神殿を訪ねていった。母神は必死でカミムスビに訴えた。あの子はあんな無残な殺され方をするような子ではありません、心の素直なやさしい子で出雲の民にも慕われています、どうか救命してください、と。

 

カミムスビは母神の訴えを聞き、憐れんだ。そしてオオアナムヂのところに赤貝の女神・キサガイヒメとはまぐりの女神・ウムギヒメを遣わすことにした。

 

キサガイヒメウムギヒメはオオアナムヂのもとに降りてきた。キサガイヒメは自らの貝殻を削り、ウムギヒメはそれを自らの乳で溶き、オオアナムヂの体に塗った。

 

・・・数十分の後・・・オオアナムヂの熱傷は少しずつ癒えているようだった。

 

そしてさらに数十分。オオアナムヂは目を開いた。

心配そうにオオアナムヂを見守っているキサガイヒメウムギヒメ、そして母・サシクニワカヒメの、3人の女神がオオアナムヂの目に映った。

 

「お母様・・・」

オオアナムヂが口を開いた。

 

「ああ、オオアナムヂ!」

 

母神はオオアナムヂに抱き着いた。キサガイヒメウムギヒメは喜びにあふれた顔で親子を見守っていた。

 

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古事記の話 目次 

 

 

☆赤貝とはまぐり

 

貝の煮汁や生貝の汁は、古代日本にあっては実際にやけどの薬として用いられてきたそうです。

(ただしガマの花粉と同じく細菌感染を起こしかねませんので、やけども現代の医薬で治療してください)

 

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