古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

うさぎの話

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わたしはもともと、隠岐の島に住んでいました。隠岐の島からは、山陰のきれいな砂浜、鮮やかな松原が見えていました。わたしは海を越えて向こうの国へ行ってみたいと思ったのです。でも、わたしには海を渡る手段がありません。

 

わたしは考えました。海にはわにがたくさんいます。そこでわにをだまして、隠岐の島から一列に並ばせて、その上を飛び越えていこうと思ったのです。

 

そこで、海のわにに、うさぎの一族とわにの一族と、どっちが数が多いか競争をけしかけたのです。

 

わにはわたしの策略とも知らず、隠岐の島からここ気多の岬まで、一列に並びました。わたしはわにの数を数えるふりをして、背中を飛びながらここまで渡ってきたんです。

 

しかしあと一匹で最後という時でした。わたしはついついうれしさで、口が滑ってしまったのです。ははは、馬鹿なわにだ!おかげで無事海を渡ってこれたぞ!と。

 

その声をわにたちは聞き逃しませんでした。騙されたと知ったわにたちは、私が地に飛び降りる直前に捕まえたかと思うと、私の皮をはいでしまったのです。

 

わたしは痛くて泣いてました。

するとそこに、たくさんの神様がたが通りかかったのです。

 

わたしは神様に助けてもらおうと、訳を話しました。

神様は大笑いしてましたが、海の水を浴びてから風に吹かれて居れば治るとも教えてくれました。

わたしはわらにもすがる思いで、海の中に入りました。塩がしみて激痛がしましたが、けがが治ると信じてやっとのことで陸に上がって風に吹かれてました。そしたら水が乾いて、塩がしみて、ものすごく痛くて、泣いてたんです。

 

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古事記の話 目次

 

 

 

 

☆わに

 

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ここで出てくる「わに」というのは爬虫類のアリゲーターやクロコダイルではなく、サメのことです。日本海沿岸では昔からサメのことを「わに」と呼んでいました。

 

サメの肉には死後アンモニアが生じます。そのため匂いがきつい一方で腐敗が遅く、冷蔵技術がなく流通システムも発達していなかった昔、山間部では貴重な海魚として重宝されてきました。

 

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