古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

再びの占い

神功皇后の自伝 5 夫の天皇の遺体は、殯宮(もがりのみや)に移された。そして、わたしは禊のために日本の国中の犯罪を徹底して取り締まるよう、命令を出した。 何しろ日本の国を治める天皇がこんな形で突然死に至ったのである。国中に穢れがまとわりついて…

国の穢れを祓え!

神功皇后の自伝 4 夫の天皇が亡くなった・・・わたしが占いをし、神がわたしの身体に降臨している間に・・・ わたしが意識を取り戻し、重臣の建内宿祢(たけうちのすくね)からそれを聞かされた時、驚きとともに言いようのない不安感が襲ってきた・・・ 愛す…

仲哀天皇の崩御

神功皇后の自伝 3 「オキナガタラシヒメさま・・・陛下が・・・天皇陛下が・・・崩御されました!!」 わたしは建内宿祢(たけうちすくね)の言葉に衝撃を受けた! 「え!?・・・タケウチ!それはどういうことです!?」 何しろ夫の天皇は、わたしに神が降…

詞志比宮にて

神功皇后の自伝 2 その年、夫の天皇とわたしは、大和から遠く離れた筑紫の詞志比宮に来ていた。先述の通り、朝廷に反乱を起こした熊襲を討つためである。 大和から詞志比宮についたその夜のことである。 その日、臣下の間で不穏な空気が漂っていた。というの…

神功皇后の自伝 プロローグ

神功皇后の自伝 1 わたしの名前はオキナガタラシヒメ。 父・オキナガスクネと母・カヅラキノタカヌカヒメの間に生まれた。父は第9代開化天皇を祖先に持ち、また母はその祖先をたどると新羅国王のアメノヒホコにたどり着く。 つまりわたしは、日本国天皇と朝…

白鳥となって

ヤマトタケルの自伝 後伝 3(キビノタケヒコの自伝) 「あ!・・・あれは・・・!」 御子のひとりが叫んだ。その声に、一同は御陵のほうを見上げた。 するとそこには、一羽の大きな白鳥が御陵の頂上に居た・・・ どこから現れたのだろうか、まるで御陵の中か…

御陵を造る

ヤマトタケルの自伝 後伝 2(キビノタケヒコの自伝) ヤマトタケルさまは薨去された。 わたしは急使をたて、大和に向けてすぐさまその報を知らせたのである。 そしてすぐに、大和に居たヤマトタケルさまの后と御子たちが、能煩野の地まで来たのである。 后た…

ヤマトタケルの薨去

ヤマトタケルの自伝 後伝 1(キビノタケヒコの自伝) わたしの名はキビノタケヒコ。ヤマトタケルさまに仕えていた。しかし、そのヤマトタケルさまは昨日、薨去された。 わたしはヤマトタケルさまが蝦夷征伐に向かうのにあたり、従者として伴をしていくことを…

大和し うるわし

ヤマトタケルの自伝 32 わたしは尾津崎を出て、大和へ向かって歩いていた。従者に支えられ、杖を突いて、おぼつかない足取りで・・・ 「ああ・・・わたしの足は三重にも曲がってしまったようだ・・・つかれた・・・」 わたしは立ちどまってつぶやいた。 「ヤ…

たぎたぎしく・・・杖をついて・・

ヤマトタケルの自伝 31 伊吹山で神の怒りにふれ、居覚の清水で息を吹き返したわたしは、大和を目指して歩き始めた。 しかし、清水で体を冷やし息を吹き返したとはいえ、わたしの体力が完全に回復したわけではなかった。 わたしは従者に支えられながら、ゆっ…

熱病にかかり・・・

ヤマトタケルの自伝 30 伊吹山で冷たい雨と雹にたたきつけられ、激しい風にあおられた・・・体の自由がまるできかない・・・ それでもわたしは天候の急変にあらがうように、山を登っていった・・・しかしますます雨と雹は激しい風にあおられ、わたしにたたき…

伊吹山に登る

ヤマトタケルの自伝 29 わたしは単身、伊吹山に登っていった。荒ぶる神を退治するために。 しかしわたしは、草薙剣をもっていなかった・・・もう必要ないだろうと、ミヤズヒメに預けてきてしまったのだ。 なんか嫌な予感がした・・・なに、大丈夫だ!!草薙…

伊吹山へ

ヤマトタケルの自伝 28 わたしは尾張のミヤズヒメのもとに数か月の間滞在していた。 しかし、いつまでもここにいるわけにはいかない。わたしは大和に復命しなければならない。先に大和に帰したオオタチバナヒメも待っている。 「ミヤズヒメ、必ず迎えに来る…

ミヤズヒメと再会

ヤマトタケルの自伝 27 わたしは険しい信濃国をすぎて、美濃を経て尾張国まで戻ってきた。 もうここまで来たら、あとは大和に戻るだけだ・・長い旅路だった・・ 尾張・・・そう、結婚を約束した尾張国造の娘、ミヤズヒメがいる地だ・・ もうあれから何年もた…

信濃国で・・・

ヤマトタケルの自伝 26 甲斐の酒折宮を出たわたしは、信濃国に向かっていた。 東国の蝦夷は平定され、みな朝廷の命に従うことを約束した。しかしまだ信濃の国、越の国には、まだ朝廷に服していない民族が残っていた。 それらの民族を平定するために、わたし…

新治 筑波をすぎて・・・

ヤマトタケルの自伝 25 わたしは足柄峠を越えて、甲斐の国まで来ていた。 わたしは甲斐の国の酒折宮(さかおりのみや)に一時滞在することにした。 その夜、宮では焚火がたかれ、そのあかりの中で食事をとり、休憩していた。わたしはその火を見つめているう…

吾妻はや

ヤマトタケルの自伝 24 わたしは蝦夷の地を後にし、大和への帰路についた。 そして常陸から武蔵へと進んでいき、武蔵から相模の国境である足柄峠までたどり着いた。 わたしは足柄峠で休憩をし、食事をとることにした。 その時だった、我々のもとに一頭の鹿が…

オオタチバナヒメ

ヤマトタケルの自伝 23 東国を平定したわたしは、相鹿(おうか)の丘前宮(おかざきのみや)に滞在していた。東国を朝廷の支配下に組み入れるための、様々な政務に追われていたのである。 そこに、妻のオオタチバナヒメがはるばる、大和から訪ねてきたのだ!…

東国を平定

ヤマトタケルの自伝 22 行方の国から陸路、わたしは従者を引き連れてさらに北のほうに進んでいた。そして当麻(たぎま)まで来た。 この地を支配するカラスヒコを征伐することが目的である。 常陸に入って味方になり一緒に従軍してきた蝦夷の長老によると、…

流れ海の北へ

ヤマトタケルの自伝 21 わたしは蝦夷を朝廷の支配下に置いた。 わたしはさらに従者を従え船を進めていった。流れ海に入り、広大な入海である流れ海の北方を拠点としていた民族を、新たに朝廷に服させた。 こうしてこの地も平定したわたしは、槻野(つきの)…

蝦夷征伐

ヤマトタケルの自伝 20 上総の国を発ったわたしは、陸奥(みちのく)を目指して進んでいた。 陸奥国に入ると、わたしは海上を進んでいくことにした。この先は全く未知の領域である。下手に陸路を進んでいくと、どのような敵に襲われるかわからない。 そこで…

オトタチバナヒメ

ヤマトタケルの自伝 19 その時、オトタチバナヒメがわたしに向かって言った。 「ヤマトタケルさま!わたくしが生贄となって海に入ります。そうすれば海の神の怒りもおさまることでありましょう。 ヤマトタケルさまは、どうかその使命を果たして朝廷に復命し…

海を渡る

ヤマトタケルの自伝 18 わたしは駿河で反逆を起こした国造を誅殺した後、さらに東に進んでいた。 わたしが国造の陰謀にはまったその日、わたしが野に入ったすぐあと、オトタチバナヒメは捕らえられたという。そして目の前で国造の兵士が、わたしが入った野に…

草薙剣!

ヤマトタケルの自伝 17 駿河国造の陰謀にはまったわたしは、枯野の中で燃え盛る炎に取り囲まれていた。炎はわたしに迫ってくる! このままでは焼け死ぬのは確実だ・・・どうすれば・・・ ・・・はるかな神代、同じように炎に枯野で炎に取り囲まれたオオクニ…

謀られた・・・

ヤマトタケルの自伝 16 翌朝、わたしは駿河国造に案内され、荒々しく乱暴な一団が住んでいるという野原に来ていた。 そこには一面の枯れ草がはるか先の地平線まで広がっていた。 「ヤマトタケルさま、この先の岩山に、その一団は砦を築いて陣取っているので…

駿河国造からの要請

ヤマトタケルの自伝 15 そして駿河の国までやってきた。 ここでわたしはオトタチバナヒメと落ち合った。彼女は大和に居たときわたしが見初めた娘である。わたしを追ってこの駿河までやってきたのであた。 「オトタチバナヒメ・・・女の足で、よくぞここまで…

ミヤズヒメを后に

ヤマトタケルの自伝 14 わたしは叔母のヤマトヒメと別れて、尾張の国に来ていた。 尾張の国造(くにのみやつこ/古代の地方長官)は、わたしを歓迎してくれた。わたしは国造の屋敷にしばらく滞在していた。 ところで国造には一人の娘がいた。名をミヤズヒメ…

ヤマトヒメからの贈り物

ヤマトタケルの自伝 13 わたしは叔母のヤマトヒメを目の前にして、泣き崩れてしまった・・・ 「ちょっと、ヤマトタケル!どうしたの?」 「ああ、叔母上・・・父の天皇は、わたしが死ねばいいと考えているのでしょうか・・・」 「え・・・ヤマトタケル、どう…

伯母上・・・!

ヤマトタケルの自伝 12 わたしは父の命を受け、東国に向かっていた。足取りは重かった・・・ なんだろう、あの父の冷たい態度は・・・伴につけてくれたキビノタケヒコなんてどんな人物かさえもわからない。ましてやヒイラギの鉾なんて、儀式に使うもので実戦…

次は東国に・・・

ヤマトタケルの自伝 11 わたしは西国を平定して大和に戻ってきた。 宮殿に戻ると、わたしは何よりも先に父である天皇に奏上した。何よりも父が喜ぶ顔が見たかった・・・いや、父に認めてもらいたかたったのである。 「父上、九州の熊襲をはじめ、西国の朝廷…