古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ヤマトタケル

白鳥となって

ヤマトタケルの崩御の報は、従者たちによって仕立てられた急使によって大和にもたらされた。 大和にいた妻や子たちは、みな急ぎ能褒野にやってきた。そして泣きながら、その能褒野の地に御陵を造り、ヤマトタケルを葬った。 葬った後も、妻や子たちはいつま…

大和し うるわし

杖をつきながらよろよろと峠を越えたヤマトタケル。 ヤマトタケルは尾津前(おつのさき)まで来ていた。そこに一本の松の木が生えていた。その松の木には見覚えがあった。 「おお、あの松は・・往路にあの松の下で食事したっけ・・あの時、木の下に剣を忘れ…

たぎたぎしく・・杖をついて

居醒の清水でようやく正気をとりもどしたヤマトタケル、再び大和に向かって歩き出した。 しかし、草薙剣をミヤズヒメのもとに置いてきて、伊吹山の神に呪われたヤマトタケル。その足取りはおぼつかなく、今にも倒れそうだった。 「ああ・・・私の心は、今ま…

伊吹山を降りる

伊吹山の神の怒りにふれ、突如振り出した冷たい雨と雹は、見る見るうちにヤマトタケルの体力を奪っていった。 足は震え、体は痙攣し、目はかすむ・・・もはやヤマトタケルは、伊吹山の神を退治するどころではなくなっていた。 「これはいけない・・・山を降…

伊吹山の神、怒る

ヤマトタケルは、伊吹山の神を討伐するために、山に登っていった。 その時、一頭の白い猪に出くわした。まるで牛のような、大きな猪だった。 ヤマトタケルはびっくりしたが、あまり恐怖感は感じなかった。 「なんだ、こいつ・・・まあおおかた、伊吹山の神の…

伊吹山に登る

ヤマトタケルは美濃の国から近江との境、伊吹山に来ていた。 東国を平定し、行く先々で歓迎を受けるヤマトタケルだったが、この伊吹山に来たとき、そこの住民から 「この伊吹山の神、好き勝手なことをして我々を苦しめています」 との訴えを受けた。 「よし…

別れ、再び

ヤマトタケルは、ミヤズヒメの屋敷に数日の間、滞在していた。 だが、ヤマトタケルは大和の天皇のもとに復命しなければならない。 「ミヤズヒメ、きっとそなたを迎えに来る。それまでしばし、待っていてくれよ」 ヤマトタケルはミヤズヒメの手をしっかり握っ…

ミヤズヒメと再び

甲斐の酒折宮を出立したヤマトタケルは、さらに信濃の国に行き、そこに住んでいた部族を朝廷に従えた。 そして、尾張の国に戻ってきた。 尾張・・・そう、結婚を約束したミヤズヒメがいるところ・・・あれからもう、幾年の月日が過ぎた。 彼女は待っててくれ…

幾夜か寝つる・・

ヤマトタケルは甲斐の国まで来ており、 そこの酒折宮に滞在していた。 その夜、ヤマトタケルはじっとたき火の日を見つめていた。暗闇の中、燃え上がる火を見ながら、ヤマトタケルの胸によぎるものは何だっただろう・・・ 自分が滅ぼしたクマソタケルにイズモ…

吾妻はや

ヤマトタケルは東国平定を終え、その帰り道、相模と武蔵の境、足柄峠まで戻ってきていた。 足柄峠で小休止し、食事をとっていた。するとそこに一頭の白い鹿が現れた。 「む、こいつ・・ただものではないな・・」 ヤマトタケルはその鹿に邪悪な霊気を感じた。…

蝦夷を平定

ヤマトタケルは上総からさらに陸奥のほうに進んでいった。 陸奥を支配していたのは蝦夷(えみし)の一族である。蝦夷たちはヤマトタケルの威風堂々とした姿に恐れをなした。かつて稚児姿で女装したヤマトタケルだったが、今はひげを蓄えた堂々たる体格になっ…

オトタチバナヒメの入水

相武の国で、朝廷に反逆した国造を誅殺したヤマトタケル。さらに東に進み、三浦半島に来ていた。ヤマトタケルは房総半島を目指し、船に乗って出港しようとしていた。 ヤマトタケルは出港前、海を見て笑って言った。「小さな海だな、この程度なら船など乗らな…

火には火を!

相武の国造(さがむのくにのみやつこ)の策略により、枯野の真ん中で火矢を放たれたヤマトタケル。たちまちのうちに火は燃え広がる。 ヤマトタケルのまわりは火で取り囲まれ、逃げ道はなくなっていた。 「これまでか・・・」 ヤマトタケルは覚悟を決めた。 …

相武の国で

尾張のミヤズヒメと別れたヤマトタケルは、東進して相武国(さがむのくに)に来ていた。 ヤマトタケルはここでも国造(くにのみやつこ)の屋敷に滞在していた。 国造はヤマトタケルを歓迎するが、その歓迎の宴でヤマトタケルに言う。 「ヤマトタケル様・・東…

ヤマトタケルとミヤズヒメ

叔母のヤマトヒメと別れたヤマトタケルは、伊勢から尾張国まで来ていた。 ヤマトタケルは尾張国造(おわりのくにのみやつこ)の家に滞在していた。国造はヤマトタケルを歓迎し、娘のミヤズヒメにヤマトタケルを接待させた。 ヤマトタケルは単身、西国を平定…

東国に旅立つ

「・・・叔母上、こんなに大事なものを・・いいんですか‥?」 「いいのよ。草薙剣に宿るアマテラス大御神の神霊は、きっとあなたを守って下さるわ。それから、これも持っていきなさい」 ヤマトヒメは小さな袋をヤマトタケルに手渡した。 「・・これは、何で…

ヤマトヒメ、草薙剣を授ける

ヤマトヒメの前で、ヤマトタケルはいつまでも泣いていた。 どのくらいの時が立っただろうか・・・ 「・・・叔母上・・それでは行ってまいります・・」 ヤマトタケルはヤマトヒメのもとを離れようとした。その時、ヤマトヒメが言った。 「ヤマトタケル、お待…

叔母の前で泣く

ヤマトタケルは、再び伊勢のヤマトヒメのもとに来ていた。 「叔母上・・・」 「あら、オウス・・・今はヤマトタケルだったわね。西国を平定したっていうじゃない、よく頑張ったわねー!」 ヤマトヒメは喜び一杯の顔でヤマトタケルを歓迎した。 しかしヤマト…

東国平定を命じられる

西国各地を平定し、朝廷に従わない者は征伐し、ヤマトタケルは大和にに帰ってきた。 「父上、ただいま戻りました!クマソタケルだけではなく、イズモタケルやほかの朝廷に反抗する者どもを平定してまいりました!もう西国はすべて朝廷の支配下であります」 …

イズモタケルを討つ

ヤマトタケルはイズモタケルと偽りの親交を結んだ。 二人して連れ立って、斐伊川のほとりを歩いていた時のことだった。 「イズモタケルさま、なかなか立派な太刀をお持ちですね」 「おう、これか・・この斐伊川は昔から製鉄が盛んでな・・良質の鋼がとれるん…

イズモタケルに近づく

クマソタケルを討ち取った、オウス改めヤマトタケル。その帰り道、まだ朝廷に服していない各地の山や川、港を支配していた豪族を従え、平定していった。 そしてヤマトタケルは出雲国に向かっていた。 出雲国のイズモタケルも朝廷に従わず、国を支配していた…

ヤマトタケルになる

クマソタケルの兄は、オウスに一突きされ絶命した。 宴会場は大騒ぎになった。 その場にいたものは我先にと逃げ出す。逃げたものの中にクマソタケルの弟もいた。 オウスは弟を追いかけると、剣を背中から刺した。身体から血が噴き出すが、即死は免れた。 オ…

クマソタケルの兄を討つ

クマソタケルの屋敷では、新築祝いの宴会がにぎやかに開かれていた。 クマソタケルの兄弟を中心に、親族や配下の者は酒を飲みかわし、上機嫌で歌ったり踊ったりしている。その中を給仕の女官たちは、忙しく男たちの間を行ったり来たりしていた。 クマソタケ…

オウス、女装する

オウスは南九州、熊襲の地に来ていた。 熊襲を束ねているのはクマソタケルの兄弟である。オウスはクマソタケルの屋敷を訪ねていた。 屋敷のまわりは兵士が三重にも取り囲んで厳重に警備しており、とても正面からはクマソタケルを打ち取れそうにない。 そのと…

オウス、ヤマトヒメを訪ねる

兄であるオオウスを、いとも簡単に、無残に殺してしまったオウス・・ まだ前髪をひたいで結っている、稚児姿の少年である。天皇がそら恐ろしいものを感じるのは当然だった。 天皇はオウスに向かって言った。 「西のほうにクマソタケルがいる。奴が率いる熊襲…

ねぎ教え諭せ

オオウスは宮中に全く参上することは無くなった。 天皇はオオウスの弟であるオウスに言った。オウスは年の頃数え十五、まだひたいで髪を結っている、稚児姿の少年である。 「お前の兄のオオウスが朝夕の食膳の席にさえ出てこないのはどういうことであるか。…

父と子と、美女と・・

垂仁天皇の崩御後、子のオオタラシヒコが皇位を継いだ。第12代景行天皇である。 天皇が即位して、しばらく時がたった時のことである。 天皇は美濃の国造(くにのみやつこ)の娘、エヒメ・オトヒメの姉妹がとても美人だという話を聞いた。そこでこの姉妹を自…