古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

根の国に移り住む

私が出雲の国の支配者となり、幾年もの年月が経った。 わたしとクシナダヒメの間には息子のヤジマヌミが生まれていた。そしてわたしはある時、出雲の国の支配をヤジマヌミに譲り、引退したのである。 わたしにはクシナダヒメのほかにも妻がおり、その妻たち…

八雲立つ

おろちはついに、動かなくなった。 わたしは屋敷の戸を開けて言った 「おい、おわったぞ!」 その声にアシナヅチとテナヅチが出てきた。 辺り一面血の海になり、おろちの残骸が小山のように転がっているその光景に息をのむ。 わたしは頭に差した櫛を取ると、…

おろちを制する

わたしは腰に差していた十束の剣を抜くと、おろちのひとつの頭めがけて、飛び降りざまに切りつけた!! ぐああーっ!! 天地が揺れるような、おろちの叫び声が響き渡る。 斬られた頭が大量の血を吹き出しながら転がり落ちていく。 おろちはのたうち回り、残…

おろちに切りつける!

八俣のおろちは、その恐ろしい姿で屋敷に近づいてきた。 そして間近に近づいてきた・・ しかし、屋敷の周りはぐるりと垣根でかこまれている。 ぐうぉーっっ!! 突如、おろちは恐ろしい声を上げたかと思うと、その八つの頭を高く持ち上げた。屋敷を囲む垣根…

おろちが現れた!!

アシナヅチの屋敷は、八つの門がある垣根でぐるりと取り囲まれた。門ごとに強い酒がなみなみ入った酒樽が置かれていた。 「みなさん、ご協力ありがとうございます。まもなく八俣のおろちがやってくるでしょう。みなさんは家に帰り、戸をしっかり締めておいて…

八俣のおろちに備えて

「よし、それでは早速、準備に取り掛かろう」 わたしはクシナダヒメのほうを向くと、ひょいと抱き上げた。そしてクシナダヒメの長い髪にふっと息を吹きかけた。 すると、クシナダヒメは竹の櫛に変わった。私はそれを自分の髪に差した。 これでもう安心だ。ク…

クシナダヒメを嫁に

「そうか、判った。安心して、わたしに任せるがよい! ところで・・・アシナヅチ! クシナダヒメをわたしの嫁にくれないか!!」 八俣のおろちの話を聞いて興奮したわたしは、アシナヅチに申し出た。 アシナヅチははっとわれに返ったように顔を上げ、わたし…

八俣のおろち

わたしは再びアシナヅチに聞いた 「八俣のおろちだと・・・それはいったい、どんな奴なのだ?」 「・・・はい・・・それは・・・口に出すのも恐ろしいほどで・・・」 そういうと、アシナヅチは涙を拭いて・・・そして続ける。 「八俣のおろちというのは、そ…

アシナヅチとテナヅチ、クシナダヒメ

「おい、お前たち・・・どうして泣いている?」 声をかけられた老夫婦と娘は、はっとして顔を上げ、私のほうを振り向いた。 老夫婦は年はとっているが身なりは整っていて上品な顔立ちをしている。また娘もとても美しく、きれいな姿形だった。 しかしその表情…

泣いていた・・

川沿いに上っていくと、そこには小さな村があった。 すでに日は暮れ、静まりかえっている。もう、みな寝ているのだろう。電気がない時代は日没とともに就寝するのが当たり前だった。 そんななか、村の中にぼーっと光る、小さな灯を見つけた。わたしはその灯…

箸が流れてきた

わたしは出雲国に来ていた。 別にあてがあったわけではない。日本の国をさまよい歩き、気が付いたら出雲まで来ていた。 出雲を流れる斐伊川のほとりに、わたしは来ていた。もう日が暮れようとしている。夕闇がわたしの心に重くのしかかる・・・ そう、昔から…

オオゲツヒメを・・・

わたしはオオゲツヒメのもとに行き、食べ物を乞うた。 オオゲツヒメは「待ってなさい、美味しいもの作ってあげる」というと、神殿の奥に入っていった。 いったいどんなものを食べさせてくれるんだろう・・・空腹に耐えかねていたわたしは、オオゲツヒメを追…

オオゲツヒメを訪ねる

わたしは高天原を追われて、地上の日本に降り立った。 わたしの財物はすべて高天原の神によって身ぐるみはがされ、身体一つだけだ。どこに行く当てもない。 わたしは呆然として、さまよい歩いていた。 もう何もかも、考えるのは嫌になっていた。 しかし、そ…