古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

古事記の話 完結

23代顕宗天皇は38歳の若さで崩御された。御子はいなかった。 皇位を継いだのは兄のオケだった。24代の仁賢天皇である。 仁賢天皇の崩御後は御子のオハツセが皇位を継いだ。25代の武烈天皇である。しかし武烈天皇にも後を継ぐ御子はいなかった。 ここに履中天…

墓を壊し帰る

天皇の兄オケは、少数の従者のみ連れて、父の仇である雄略天皇の御陵を壊しに行った。 そして帰ってきた。しかし、その帰りがあまりにも早かったので、天皇は怪しんだ。 オケは天皇に報告する 「雄略帝の墓を壊し帰ってまいりました」 「兄上、ずいぶん早か…

雄略天皇墓を壊しに行く

幼少時に自分たちの食糧を奪った、猪飼の老人を処刑した天皇。しかしそんな恨みは、父の仇に比べれば小さいものだった・・ そう、父オシハの命を奪い、自分たちが漂泊する原因を作った雄略天皇・・・父オシハの御魂に報いるためには彼を処罰しなければならな…

猪飼の老人

また天皇は、山城の国に捜索隊を送っていた。 天皇はかつて幼少時、山城の国の苅羽井で、逃走中に自分たちの食糧を奪った猪飼いの老人を探していたのである。 その老人はまだ存命だった。老人は捕らえられ、天皇の前に引き立てられた。 天皇は言う 「そなた…

置目老媼

父オシハが埋められていた場所を教えてくれた老婆。天皇はその功績を称え、老婆に「置目老媼」(おきめのおうな)の称号を与えた。 それだけでなく、天皇は老婆を宮中に召し出し、住まわせたのだ。 天皇はことあるごとに老婆を呼び出していた。宮中に造った…

父の骨を探せ

播磨の国から宮中に戻ってきたオケとヲケの兄弟。弟のヲケが第23代の皇位を継ぐことになった。後の顕宗天皇である。 天皇は父親のオシハをきちんと埋葬しようと思った。 オシハは政敵だったオオハツセ・後の雄略天皇により暗殺され、その遺体は切り刻まれて…

都に帰るオケとヲケ

シジムの屋敷の新築祝いでその正体を明かしたオケとヲケ。朝廷から派遣されていたオタテは慌てて駆け寄るあまり、土間に転げ落ちてしまった。 それを見たオケとヲケが駆け寄る。 「ああっ・・大丈夫ですか!?」 「いえ・・御子の苦労に比べたら、なんてこと…

舞う少年

シジムの家の新築祝いで舞を舞うように命じられた釜焚きの少年の兄弟。意を決した兄は前に進み出て構えた。その姿にまた、どっと笑い声が響く。 しかし・・・ 少年が舞い始めると、その笑い声は消え、会場は凍り付いた。 何だ・・・この滑らかな舞は・・・こ…

播磨の国、シジムの屋敷で

播磨の国に、朝廷からオタテという人物が地方長官として派遣されていた。 ある日、オタテはこの地の豪族シジムの家に招かれた。シジムが屋敷を建て直したので、その新築祝いに招かれてきたのである。 シジムの屋敷では、にぎやかに宴会が開かれていた。酒に…

アブと蜻蛉と天皇と

これも天皇が狩りに出たときのことである。 天皇は椅子に座って休憩していた。その時、アブが飛んできた。 天皇は腕を振ってアブを追い払おうとする。しかしさすがの暴君もアブ相手にはかなわない。 アブは天皇の腕を刺し、飛んでいった。 天皇は恨めしい顔…

私がオバアさんになっても

巡行に出た先で美しい少女に出会い「宮中に召し出すから嫁には行かずに待っていてくれ」と言ったまま忘れていた天皇。それから数十年の時が経ち、今は老婆となったその時の少女アカイコが天皇に謁見していた。 「あ・・アカイコか・・あの時の・・」 「ああ…