古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

コノハナサクヤヒメと出会う

 オモイカネの自伝 31

 

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ニニギさまが高天原から日向に降臨して数か月。

このころになると、ニニギさまの日本統治も板についてきており、日々政務にいそしんでおられました。ご多忙の中にも充実された毎日を送られているご様子でありました。

 

そんなある日、ニニギさまは巡幸に出掛けることになりました。わたくしもニニギさまのお伴をしていくことになりました。

巡幸先の村々では、民の歓迎を受けつつ、様々な陳情をお受けになられました。民の声に一つ一つ丁寧に耳を傾けるお姿は、慈愛溢れる統治者の雰囲気があふれ出ておられました。

 

その巡幸先でのことです。ニニギさまはお忍びで、わたくしだけを連れて仮宮からお出かけになられていました。

笠紗の御前(かささのみさき)を通りがかった時でした。そこの泉で水くみをしている娘がおりました。

その時・・・

 

「ニニギさま?・・・」

なんか様子がおかしい。水くみをしている娘をじっと見つめています。これは、もしや・・・

 

「あ!ニニギさま!お待ちを・・・」

しかし、お止めする間もなく、ニニギさまは娘に近づいていき、話しかけていました。やむをえません、わたくしは二人のやり取りを見守っていました。

 

「そなた、名は何と申す?」

「え・・・はい・・・わたくしはコノハナサクヤヒメと申します」

「そうか。わたしは天の御子、ニニギだ」

「ええっ!・・・」

 

娘はニニギさまの名を聞いてびっくりしていました。まあ、そりゃ、そうでしょうね・・・

ニニギさまは続けて仰せになります。

 

「わたしはそなたを后として迎え入れたい。どうだろうか」

 

やっぱりそうきましたか・・・

 

これに娘は答えます。

「いきなり言われましても・・・父上に伺ってみないことには・・・」

 

「そうか、そなたの父は何と申す?」

「はい、オオヤマツミでございます」

「ほう・・・オオヤマツミというのは山の神だな。そなたは山の神の娘なのか・・・オモイカネ!」

 

「・・は、はい」

「オモイカネ、わたしは先に仮宮に戻っている。すまんがコノハナサクヤヒメを彼女の屋敷まで送っていってくれないか。そして父君オオヤマツミの返事を聞いてきてくれ」

 

・・・やれやれ、仕方ありません。わたくしはご命令の通り、屋敷まで娘を送り、オオヤマツミの大神にニニギさまの求婚の旨を伝えました。

 

オオヤマツミの大神は

「そうですか、天の御子がわたくしの娘を・・・それはまことに光栄なことでございます。早速明日、コノハナサクヤビメを仮宮のほうに向かわせましょう。

姉のイワナガヒメも一緒に添えて天の御子のもとにやりたいと思います。そのようにニニギさまにはお伝えください」

と言われました。

 

わたくしは仮宮に戻り、ニニギさまにオオヤマツミの大神の言葉を伝えると、ニニギさまはとてもたいそうお喜びでした。

ところが・・・

 

わたくしはオオヤマツミの大神の言葉から、その言葉に込められた神願を読み取っておりました。しかし、それをニニギさまには伝えませんでした。

それが間違いだったのでございます・・・ 

 

  

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オモイカネの自伝 目次

 

 

浅間大社

 

静岡県富士宮市にあり、富士山麓の本宮と山頂の奥宮から成っています。全国の浅間神社の本社とされています。

富士山はその美しい山容から、古くから女神として信仰されてきました。いつのころからかコノハナサクヤヒメが御祭神とされるようになりました。

 

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 (画像は富士市フリー素材写真集より)

 

 wikipedia 富士山本宮浅間大社

 
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