オモイカネの自伝 6
スサノオの大神が天の浮橋を昇りきり、高天原に姿を現されました。
そして、アマテラス大御神は・・・
スサノオの大神を出迎えるために、男装されたのです。その時のお姿・・・
その長い髪の毛をみずらに結い直したのです。
そしてそのみずらの髪にも、みずらを結っているカズラの紐にも、左右の両手にも、数多くの勾玉を巻き付けてありました。
背中には千本の矢が入った矢入れを背負い、胸には五百本の矢が入った矢入れを括り付けました。左の腕には竹製の防具を装着されました。
そんなお姿で、高天原に昇ってきたスサノオの大神の前に、姿を現されたのです。
アマテラス大御神は手に持った弓を振り上げ、脚を高く上げて一歩前に踏み出しました。その勢いで立つ土煙はまるで淡雪のようでした。
そばで見ていた我々従者の神も、そのあまりの迫力に息をのみ、何も言えませんでした。
見つめるアマテラスの眼光に、さしものスサノオの大神も威圧され、たじたじとしたご様子でした。
スサノオの大神を目の前にして、アマテラス大御神が仰せになりました。
答えなさい!!」
その迫力・・・普段穏やかなアマテラス大御神からは想像もできません。
逆に、乱暴者と噂の高いスサノオの大神のほうが委縮されているご様子でした。
スサノオの大神は、おずおずと、口を開かれました。
「姉上・・・わたくしは決して、おかしな心は持っておりません・・。
わたくしは黄泉の国にいる母上の国に行こうと思うのです。その前に、姉上にご挨拶をしようと思って、高天原に昇ってきたのです」
「なにを見え透いた嘘を・・・そなたはこの高天原を乗っ取りに来たのでしょう!」
「なにを行っておられるのですか、姉上!私はそんな心はもっていないと言ってるでしょう!!」
「ならばそれをどうやって証明するのです!!」
アマテラス大御神と、スサノオの大神の間に緊迫した空気が流れました。われわれ配下の神々は、いきをのんでお二人のやり取りを見守っていました。
そして、スサノオの大神が仰せにになられました。
「姉上・・・ならば、互いにうけいをして、子を産みましょう・・・」
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☆みずら
みずらとは古代の男子の髪型で、髪を中央から二つに分け耳の横で8の字型に結んだものです。
語源は「耳に連なる」だったり「美面」の意味だ、などとといわれています。
漢字表記では「角髪」と書くほか、「美豆良」「美豆羅」などの表記もあります。結び方にもバリエーションがあり、耳の上で結ぶもの、耳の下で結ぶものがあり、また後世になると輪がひとつだけのものが主流になりました。
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