オオナムヂを野原の真ん中に誘い出し、周囲に火矢を放った。枯れ草は勢い良く燃え上がり、四方は火の壁となってオオナムヂに迫ってくる。さあ、この難局をオオナムヂはどうやって抜け出すか・・・楽しみだ・・・
翌朝
スセリヒメがわたしのもとに来て言った
「父上・・・昨夜からオオナムヂ様さまが見当たりません。ご存じありませんか?
スセリヒメは不安そうなそぶりでそわそわしている。わたしはオオナムヂとスセリヒメが恋に落ちていることを知っている。そりゃ姿が見えないとなれば心配だろう。
そして、スセリヒメは昨日のことは知らない。
わたしはスセリヒメに、昨日からのことを話して聞かせた。
スセリヒメは聞いているうちに、顔から血の気が引いて行った。それはそうだろう、愛する男が死の危機にあるのだ。
いたたまれなくなったスセリヒメは、宮殿を駆け出し、オオナムヂが火に巻かれた野に向かって走って行った。
わたしはゆっくりと、スセリヒメの後から歩いて野に向かっていった。
昨日まで枯れ草が生い茂った一面の野原だった。今、そこは、一面の焼け野原だった。まだ火がくすぶり、あちこちから煙が出ている。
そこに スセリヒメが立っていた。涙を流している。もうオオナムヂは死んだと思い込んでいるのだろう。
本当にオオナムヂは死んだのか・・・まあ、これで焼け死ぬようなら、そこまでの男だったということだ。
わたしはゆっくりスセリヒメに近づいて行った。すると、突然スセリヒメが声を上げた。
「オオナムヂさま!!」
スセリヒメは野原の中央をじっと見つめていた。その方向に目を凝らすと・・・
くすぶった煙の中に人影が見えた。煙のなか、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる・・・
オオナムヂだ。
生きていたか・・・
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