こうしてホオリは高千穂の宮に戻り、再び日本の国を統治するようになっていた。そんなある日のことだった。
高千穂の宮に一人の女神が訪ねてきた。
ホオリは女神を見るなり、喜びと驚きが混じったような声を上げた。
「おお!トヨタマ!」
そう、訪ねてきた女神は愛する妻、海神の宮殿に残してきたトヨタマヒメだった。
「ホオリさま、お久しぶりでございます。ずっと会いとうございました。」
「トヨタマ、すまん。それはわたしも同じだ。お前のことはひと時たりとも忘れたことは無かった。だが、日本の統治者ともなると、お前を迎えに行く時間がなかなか取れなくてな」
「ホオリさま、御多忙なのはわかっております。それより、ホオリさま・・・・」
「ん?どうした?」
「はい、わたくしはホオリさまの御子を宿しております。天の御子を海原で産むのもどうかと思い、陸に上がってまいりました」
「え!子供ができたのか!・・・トヨタマ、よくやった!」
ホオリは愛する妻との間に子供ができたと聞くと、うれしさで天にも昇る気持ちだった。
「つきましてはお願いがございます。わたくしは海神の子でございますので、海岸近くに産屋をたてていただきたいのです」
「よし!早速取り掛かろう!」
こうして直ちに、トヨタマヒメが上陸した海岸に産屋が建てられた。屋根は鵜の羽で葺くことにした。そして、もう少しで産屋が完成しようとしていた時だった・・・
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