古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

「古事記の話」にお越しいただきありがとうございます

古事記を小説風に書き直してみました。

 

古事記を基本としつつ、話によっては日本書紀風土記のエピソードも取り入れながら構成しています。

 

☆わたしは古代史好きの素人であり、学者でも専門家でもありません。ネットで調べ調しながら書いており、また皆様に興味を持ってもらえるよう、わかりやすく面白く編集しております。

そのため専門的・学術的な解釈から見れば間違っているところもあるかと思います。ご了承ください。

 

☆参考文献

  中村啓信「新版古事記」角川文庫

  坂本太郎家永三郎井上光貞大野晋「日本書記(一)~(三)」岩波文庫

  中村啓信「風土記 上・下」角川文庫

  萩原千鶴「出雲国風土記講談社学術文庫

 

 

古事記の話 目次

 

母の呪文

ハルヤマノカスミの自伝 6

 

 

 

異母兄のアキヤマノシタヒはわたしとの約束を守ることは無かった

まあ、わたしとしてはそんな約束、どうでもいいことではあったのだが・・

しかし、あのアキヤマシタヒの態度には、腑に落ちないものがあった。

 

わたしは家に帰ると、母にその話をした

すると母は、おおきなため息をついて

 

「我々は神の国に住んでいます。なので我々は神の国のしきたりによく従うべきなのです。なのに・・

アキヤマシタヒ殿が神の国のしきたりに従わず約束をたがえるというのは、人間社会に染まってしまったからなのだろうか・・・」

 

と言った。そして・・

 

母上は、伊豆志河(いずしがわ)の中洲から一本の竹を取ってきた。

母上は器用にその竹を裂くと、見る見るうちに目の粗い、小さな籠を作り上げた。

 

さらに河原から石を拾ってくると、その石を竹の葉でつつみ、そこに大量の塩を振りかけた。

そしてそれを、かまどの上に置くと、手を合わせて

 

「この竹の青々とした葉が、生気を失い萎えていくように、彼の命もなえていくがいい!

塩(潮)が満ち干きするがごとく、彼の命も干いていくがいい!

この石が水に沈んでいくように、彼の命も沈んでいくがいい!」

 

と、呪文のように唱えたのだった

その母の姿には、背筋が凍るものを感じた・・

 

そして、その後の兄アキヤマシタヒはというと・・

 

その夜から病に寝込んだのだった!

そしてその病はだんだん悪化し、8年の後にはアキヤマシタヒの身体はやせ衰え、ほとんど寝たきりの状態になっていた・・

わたしは母の呪力の強さに、何か空恐ろしいものを感じたものだった

 

そんな折、わたしの母のもとに、アキヤマノシタヒが訪れた。自分の病は母上の呪術が原因だとうわさを聞いたのだろう。

そのアキヤマノシタヒの姿・・・手足はやせ衰え、顔は土色で頬はこけ、上は抜け落ち体中に吹き出物ができており、杖にすがってようやっと立っているその姿は、見るも無残だった。

 

母上のもとを訪れたアキヤマシタヒは、泣いて自分の行為を詫びた。

それを聞いた母上は、アキヤマノシタヒを許し、呪術を説いた。

そしてやっと、アキヤマシタヒの病は癒えて回復していったのだった

 

今、世間で言われている「神の賭け事」とは、この出来事が世に広まり、使われるようになった。

そして、わたしは今も、妻のイズシオトメと幸せに暮らしている。

 

  -ハルヤマカスミの自伝 完ー

 

 

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ハルヤマカスミの自伝 目次

 

 

 

☆神の賭け事

 

古事記では「神うれづく」と表記されています

「うれ」はうら(裏=身体の内側、すなわち『心』)、「づく」は『憑く』の意味で、神意がどちらに寄り憑くか賭ける意味だそうです

現代ではこんな言い回しはしませんが、古事記編纂当時はあったのでしょう

 

それにしても、主人公のハルヤマカスミより母の活躍が目立ちますね。

母に八十神(異母兄)から救われたオオクニヌシの話に似たところがあります

 

これにてハルヤマカスミの自伝、完結とさせていただきます

次は神話の時代に戻り、日本創世の話をイザナミの視点から一人称で語っていきたいと思います

再開時期は未定です。今回のお休みは長くなるかもしれませんが、引き続きよろしくお願いいたします

 

 

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